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事業をエンジニアリングする技術者たちを読んだ(改訂版)


読みました。2年前の初版も読んだのですが、改めて全部読み直しました。とにかく全エンジニアは読んで損はない本です。

改訂版

今回2年経っていることもあり、それぞれのプロジェクトの後日談が追記されています。更に、新規で2つ「テレシー」と会社統合にあたっての「基盤システム統合プロジェクト」の2つが追加されています。

後日談については、どれも当時の現場担当者の退職、コロナによる状況の変化、方針の転換など生々しい状況が書かれていました。後日談の、内容はどれも10ページいかない程度で、簡素な内容だったので、詳しい経緯などは書かれていませんでしたが、エンジニアリングなんてものは、日々変化していくのが当たり前でそれを受け入れないと前に進むことのできない職業というのを、改めて感じました。

自分の身の回りでも主担当が退職したり、プロジェクトを去ったりすることがありました。そんな時「あの人いなくなったらこのプロジェクト終わったわ。。」って最初は思うのですが、少し時間が、経つと自分の振る舞いや立ち位置などを考えるようになり、周りのメンバーについてもどうすればよいか考えるように自然になります。そして行動するのですが、これは、その状況を受け入れて前に進む覚悟をしているんだなと思いました。(たまに前ではなく後ろに進むこともあるけども)

新しく追加された「テレシー」と「基盤システム統合プロジェクト」についても現場の状況が想像できる内容で、とても読み応えがありました。テレシーは、データサイエンスのエンジニアがいない!からはじまり、最終的には、適任者をみつけ更には、新卒のエンジニアに教育までして少数チームでうまく周るようになるまでを描いているが、「休んだらバックアップする人間がいない状況は辛かった」という言葉が生々しく本当にそうだろうなと思った。

基盤システム統合プロジェクトは、バックオフィスの統合では、失敗が許されないプロジェクトということで、かなりのストレスが掛かりそうなプロジェクトで正直自分は耐えられるか分からないなと思いながらも、全職種の協力を得ながらエンジニアリングしていく姿には、感動しました。これこそ「真のエンジニアリング」という気がしました。

良かったところ

初版からの箇所で特に良いなと思った箇所が、3つあります。

  • 「新しくジョインしたメンバーにはその日に、環境構築からリリースまでを行う」
  • 「ドキュメントはなく全てGithubのissueで管理している」
  • 「ビジネスと開発の距離の縮める」

です。

新しくジョインしたメンバーにはその日に、環境構築からリリースまでを行う

これは、あるあるですが、新しい職場だったり、プロジェクトに参画した際に初日は大体環境構築で終わることが多く、終業時には、慣れていないのもあっていつもより疲れたなと感じることがあります。それを、ジョインしたその日に、環境構築→実装→レビュー→デプロイまでしてリリースまでしてしまうという内容を、Zucksというプロダクトでは行われているようでかなり驚きました。(第2章より)

そもそも文化として、みんなが、フルサイクルエンジニア思考である文化だったり、何か起きた時に、すぐに切り戻しができるようになっていたりと環境が整っているからこそできる芸当なのですが、とっても良い取り組みだなと感じました。リリースまでは無理でもリリースまでを、誰でも簡単に行える環境にしておくという意識をメンバー全員が持つことってすごく大切なことだと改めて思いました。

ドキュメントはなく全てGithubのissueで管理している

これも2章のZucksの中で語られていることで、所謂ドキュメントというものを書くことはなく、全てGithubのissueベースになっているらしくこれも良いなと思いました。issueが、良いかというより一箇所に全てまとまっていることがとても大事で、検索のヒットのしやすさでも、issueは適していそうです。会議の議事録も全部PRベースになっていれば差分も見れますし、機会があればやってみたいなと思いました。ただ、どうしてもエンジニア以外も巻き込むのが、ハードルが高くてこれは3つめの良いところを実践していく必要がありそうです。

ビジネスと開発の距離の縮める

第5章サポーターズの中で出てきた話で、Bizとdevで考え方が共有されておらず、既存システムが負債になってしまったところから、お互い時間を作って認識合わせのMTGをしてお互いの意見を述べながらプロダクトをリプレースする動きになったり、お互い歩み寄るために組織ごと再定義するまで行っていました。

これも結構あるあるな話で、エンジニアと非エンジニアの間での歪みというか、認識違いというかは結構あるなと思います。お互い腹を割って話すことが果たしてできているのかが肝になりそうですが、何かモヤモヤ感じていることがあったりしたまま仕事を進めるのは、非常に良くないことだなと改めて思いました。

受託とかだと、営業とエンジニア間で特に歪みが生まれそうなので、定期的にコミュニケーションする必要があります。結構受け身になってしまいがちですが、エンジニアの方からアプローチを掛けていくことができると良さそうです。

次回作に期待

この本の良いところは、twadaさんがリアルな現場で起きていることをインタビューすることで、実際のエンジニアリングの様子を俯瞰して見ることができることなので、是非また違う企業などをインタビューして次回作があると嬉しいなと思います。